
「なんで旅が好きなんですか?」
そんな質問をいただきました。
よかったら記事に書いてください、とリクエストをいただき、改めて自分と旅について考えてみることに。
すると、旅に対する想いが次から次へと湧いて出てきました。
今日は、わたしが旅を好きになった理由について綴ってみたいと思います。
子どもの頃、旅は楽しいものではなかった

わたしは、二人の弟がいる長女です。
父と母、そして三人きょうだいの五人家族で育ちました。
幼少期の記憶をたどってみると、家族旅行らしい旅行は片手で数えられるほどしかありません。
父の仕事の都合で転勤が多く、両親の実家も遠方だったため、長期休みになると決まって父の故郷・尾道へ帰省していました。
五人分の移動ですから、それなりにお金もかかります。
だから移動手段はいつも車。
車内には家族全員分の大荷物が積み込まれ、狭い後部座席では、わたしたち三人きょうだいが陣地の奪い合いでけんか。
助手席に座る母は、自分の実家ではなく父の実家にばかり帰省することに苛立ち、その空気に父もムスッとする。
そんな車内で何時間も続く移動は、正直なところ楽しい思い出というより、「しんどかったなぁ」という記憶の方が強く残っています。
そんな子ども時代を過ごしたわたしが、なぜこんなにも旅好きになったのでしょう。
初めて見た、知らない世界

そのきっかけは、高校生の春休みに経験したアメリカへのホームステイだったように思います。
当然ながら初めての海外。
母のご機嫌からも、狭い車内での長時間移動からも解放された春休みは、これまでとはまったく違うものでした。
急に世界が広がった感覚。
背中に羽が生えたような、自由に飛び立った気分でした。
もちろん、帰省が嫌だったわけではありません。
でも、初めて見る海外の景色は、何もかもが新鮮でした。
ホームステイ先のキッチンやお風呂は、まるでシルバニアファミリーの世界のよう。
可愛いお部屋に置かれた真っ白なベッドや棚を見ては、プリンセスになった気分でした。
スーパーマーケットには見慣れないお菓子が並び、カラフルなポストカードがずらり。
日本では見たことのないぐらいの大きなお肉の塊が、パックに個装されるのでなく、丸裸で豪快に陳列されていたことにも驚きました。
目に入るものすべてが面白くて、感動の連続。
「もっといろんな場所に行ってみたい」
「自分の目で見て、感じてみたい」
そんな気持ちが芽生えたのは、この頃だったと思います。
移動そのものが楽しかった青春18きっぷの旅
そして高校二年生の夏休み。
学校に内緒で、こっそりしていたアルバイトで貯めたお金を握りしめて、友達と青春18きっぷの旅に出ました。
関西からローカル線を乗り継ぎながら憧れの東京へ。
新幹線ならあっという間の距離ですが、時間はあるけどお金はない当時のわたしたちの、「なんとしても東京へ行きたい」という想いが詰まった大冒険でした。
窓の外の景色が少しずつ変わっていくこと。
知らない駅で乗り換えること。
どれもが新鮮でした。
そして何より、
「線路ってずっとつながっているんだ」
そんな当たり前のことにまで感動していました。
今思えば、旅先の目的地だけではなく、そこへ向かう過程そのものを楽しんでいたのかもしれません。
旅にはいろんな楽しみ方があると知った大学時代
時は流れ、大学生になりました。
それなりにアルバイトをして、少しだけ自由に使えるお金ができた頃、友人と和歌山へ旅行に出かけました。
浴衣を着て旅館でゆっくり過ごし、温泉に入り、懐石料理を味わう。

翌日は、イルカの背中に乗って一緒に泳ぐ体験まで。
自分で稼いだお金で、その時できた最大の贅沢。
旅は冒険だけではなく、自分を満たす時間にもなる。
そんな発見の連続でした。
もしかすると、わたしが本格的に旅を好きになったのは、この頃からだったのかもしれません。
旅に出ると、自分に戻れる
旅先で見てきた景色ももちろん好きです。
美味しいものを食べるのも好き。
知らない土地を歩くのも好き。
でも改めて考えてみると、本当に好きなのは、旅に出ることでいつもの自分から少し自由になれることなのかもしれません。
そして先日の金沢の旅で、もうひとつ気づいたことがあります。
それは、旅に出ると自分を客観的に見られるということ。
毎日の暮らしの中にいると、目の前のやることや人間関係に意識が向き、自分の本当の気持ちが見えなくなることがあります。
でも、知らない土地を歩き、美味しいものを食べ、景色を眺めていると、不思議と頭の中が整理されてくる。
「ああ、本当はこうしたかったんだな」
「最近ちょっと頑張りすぎていたな。あれはちょっと嫌だったな。」
「そうだ、いいこと思いついた!!」
「このネタでイラストを描きたい。」
そんな心の声から、気づけば普段思いつかないようなアイディアが降ってくるのです。
旅は、わたしにとって心のエッセンス
だから、わたしにとって旅は「心のエッセンス」。
創作意欲をムクムクとわかせてくれる大切なこと。
特別なご褒美というより、自分らしくいるために必要な栄養のようなものです。
遠くへ行かなくてもいい。
数時間の小さなお出かけでもいい。
いつもの場所から少し離れて、自分の心の声を聞く時間を持つこと。
それだけで、また明日から頑張ろうと思えることがあります。
ママがご機嫌だと、家族もご機嫌。
その小さな積み重ねは、自分の心の栄養となり、それが創作意欲につながり、きっと暮らしを豊かにしてくれるはず。
だからこれからも、遠くても近くても。
わたしは旅を続けていきたいと思います。
神戸 トラベルイラストレーター えやひろみ
