前回の記事で、思い出深い二つのモノをお別れしたお話をしました。
ひとつが、前回お話したトランポリン。
そしてもう一つ、お別れした思い出のものとは……
アイロンビーズに託した想い
それは、IKEAのアイロンビーズ。
※アイロンビーズとは、カラフルなパイプ状のビーズを専用のプレートに並べて、描きたい形を作り、クッキングシートを被せて中温程度のアイロンで上から軽く押さえるとビーズが溶けてビーズ同士がくっつき、オリジナルの作品が作れるというもの。
(アイロンを使う時は必ず大人の人と一緒にやってね♪)
娘たちが幼稚園の頃、幼稚園でお友達と自分が作ったアイロンビーズの作品をプレゼントし合うということが流行っていました。
「〇〇ちゃんの家にあるアイロンビーズ、うちも欲しい」
そう言う娘たち。
抗がん剤治療中でしんどい日もあった当時のわたしは、幼い娘たちのことを元気に構ってあげれずに申し訳なく思っていました。
おうちで姉妹仲良くビーズで遊んでくれるなら……手先も器用になりそうだし。
そんな想いで買ってあげることにしました。
想いと裏腹に封印してしまったアイロンビーズ
実際に購入してみると……
細かいビーズがバァーーーーーーーーっと部屋中に散らばったり、
「ママ〜〜〜〜アイロンして〜〜〜〜」
と呼ばれたり。
横になりたいのにゆっくりできない……
逆にしんどかったです。
「ママ〜、一緒にやろ〜〜〜よ〜〜〜」
誘われると、
正直「え……ムリ……」
となる日も多々ありました。
一緒に遊んであげれる日もあれば、そうじゃない日もありました。
そうじゃない日の方が多かったです。
アイロンビーズは、わたしが元気な時、もしくは夫がいる時、そんな日だけ使うようになり、段々封印されるようになりました。
一生の宝モノかも
そして二度目の抗がん剤治療をすることになった時。
娘たちは小学校低学年。幼稚園の時よりずっとしっかりしてきて、何でも自分でできるようになった頃。
思い出したようにまたアイロンビーズで遊ぶようになりました。
ちょっと横になって休んでいたわたしに、娘二人がニヤニヤしながらやってきて
「ママにプレゼント〜〜〜! ジャーーーーーーン 」
と言って渡してくれたのが……
なんと、わたしの似顔絵アイロンビーズとお手製メダル。
メダルの似顔絵は、当時のわたしの姿。家でリラックスモードのメガネスタイルです。抗がん剤で脱毛していた頭には、ちゃんと配慮して帽子を被せてくれていました。出かける時によく被っていたお花の飾りの付いた帽子。よく見ているなと思いました。
そして、アイロンビーズの方は……
元気になった未来のわたしの姿。髪の毛がちゃんと生えてニコッとしています。
ママは元気で笑顔が一番。それが家族の幸せ。早く元気になりたい。そう感じた瞬間でした。
シンプルに素直に生きたい
そんな思い出のアイロンビーズ。
高学年になった娘たちは、もうアイロンビーズで遊ばないと言うのでお別れを決めました。
赤黒白黄色ピンク……色んな色のビーズ。まるでわ当時のわたしの気持ちを表しているよう。
毎日コロコロ変わる気持ち。その気持ちの変化についていけない、ついていくのがしんどい、と感じていた日々。
「なんでこう思ってしまうんだろう、ダメだな、わたし」「こうさせてしまった、申し訳なかった……」
「元気だったらこうしてあげれたのに」と、色んなことをネガティブに考えていました。
今思えば、当時のわたしが元気いっぱいだったとしても、一緒に全力でアイロンビーズで遊んでいたかも正直わかりません。
「病気だから」と、背負わなくていい想いを重たく背中に乗せて過ごしていたように思います。
「今日はこんな気持ちだった」「こんな風に思った、感じた」そして「どうしてそう思ったのだろう?」「そっか、とっても頑張ったんだ」「こうされるのが嫌だったんだ」「ごめんね、じゃなくてありがとうって言えばいいんだ」
シンプルに感じればいいだけのこと。
わざわざ自分で複雑にしていました。病気に紐づけて。
生きている限り、健康であっても、気持ちが元気でない日も当然あると思います。
どんな時もシンプルに。そして、しんどい時は「しんどい」と伝えて、助けてもらったら「ありがとう」と伝える。
素直に生きていきたいと思います。
神戸 トラベルイラストレーター えやひろみ