
すっきり身軽になれば、軽やかに動ける。
見えてなかった景色が美しく見える。
無理だと思っていたことにも、挑戦してみたくなる。
これまでのお片付けを通して、こんなふうに心が動くことを、わたしは実感しました。
「いま、自分に本当に必要なものだけを大切にしたい」
「好きなものに囲まれて、気持ちよく暮らしたい」
心からそう思います。
それでも、なぜか手放せないものがいくつかありました。このブログでも少しずつご紹介していますが、今回は、中でもずっと引っかかっていたaikoのCDアルバムのことについて。
観ても聴いても楽しい思い出が詰まったアルバム

学生時代から大好きだったaiko。
可愛らしいファッション、素直な気持ちを少しクセのある独特な言い回しで表現した歌詞、ポップでカラフルな、遊び心いっぱいのCDジャケット。
観ても聴いても楽しくなっちゃう。だから大抵のアルバムを集めて持っていました。
季節の記憶とリンクしている曲もたくさんあります。
夏になると無意識に口ずさんでしまうあの歌。
春先のまだ寒い空気の中、原付に乗って熱唱していたこの歌。
アルバムを手にとるだけで、若い頃見た景色や感じた温度がいっきに蘇ってくるのです。
もう聴かない、でも手放せない
だけど、わが家のCDラジカセは壊れてしまい、もう聴くことができなくなりました。
パソコンに取り込むのも面倒で、CDはずっと棚にしまわれたまま。新しいCDラジカセを買う気にもなれず。
「もう聴かないんだし、そろそろ手放してもいいかもしれない」
何度もそう思っては、いざCDを手に取ると、aikoもCDジャケットも可愛くて好きだな~と、決意が鈍ります。
でもいい加減こんな堂々巡りは疲れた。
半ば勢いでこの春にほとんどのCDを手放しました。
「ほとんど」と言うのは、どうしても手放せずに2枚のアルバムだけ手元に残したから。
どちらも初回限定盤ではなく、aikoを好きになり始めたばかりの頃に出会った、いちばん思い入れのある初期の作品でした。
たくさん手放したのに、スッキリしない。手放したらスッキリするんじゃないの?!
なぜかずっと「なにか」が引っかかる。
「しっくりこない」感覚が残っていたんです。
それが「なに」なのか、はっきりわからない。
モヤモヤをずっと抱えていました。
描くことが教えてくれたこと

ところで、わたしは、人の横顔や、後ろ姿を描くのが好きです。
横顔や後ろ姿に惹かれる理由。
それは、「その人らしさ」が垣間見えるから。
わたしは、魅力の正体を知りたくて描いているのだと気づきました。
「らしさ」をのぞき見したくなるようなワクワクする感じ。
こんなことを考えながら後ろ姿を描いている時に、ふと昔の記憶がよみがえってきました。
ワクワクは隠されたところにある
わたしは子どもの頃、小さな子向けの分厚いボードブックの絵本を見ると、どうしても最後のページをめくりたくなる子でした。
「この奥に、まだ何か隠れているんじゃないか? 絵や文字、アナザーストーリーが潜んでいるかもしれない……」
ワクワク期待しながら、めくれるはずもないページを必至でめくっていたのです。
もちろん、実際には何もなくてガッカリしていたのですが、それでも「もしかしたら……」という気持ちをどうしても止められませんでした。
aikoを好きな理由。遊び心。

何かあるかもしれないというワクワクする感覚は、大人になった今でも、わたしの中にも残っていたのだと、気づいたのです。
aikoの初回限定盤のアルバムたちには、その“めくりたくなるワクワク”が散りばめられていました。
曲が終わった後の沈黙の先に突然始まる隠れトラック。
ケースを開けてジャケットを取り出すと現れる仕掛けつきの歌詞カード。紙がめくれるようになっていて、その中にはaikoからのメッセージが隠れているのです。
『見つけてくれてありがとう』
『今回もやっぱりあけた?』
見つけた人だけが味わえる特別感。
「あぁ、あれが好きだったんだ。忘れていたけど、わたしはこの遊び心とサプライズの感覚が、たまらなく好きだったんだ。」
aikoのファンでいた理由が、やっとはっきりわかりました。
だけど、そのことに気づいたときには、もう初回限定版アルバムの数々を手放してしまったあとのことでした。
思い出すだけでワクワクできるような仕掛けたち。
わたしが好きだったのは、ただの音楽じゃなくて、音楽の向こうに広がる小さな遊び心と、喜びだった。
それにやっと気づいたとき、手放した後に残ったモヤモヤの理由がハッキリわかりました。
手放すことにばかり囚われて、「楽しませてくれてありがとう」の感謝をちゃんとしていなかったのです。
理由がわかった今、少し切ない気持ちもあるけれど、残っていた2枚の初回限定版ではないアルバムを、もう一度手に取りました。
「このアルバムも、隠されたメッセージを見つけたかった。全部見たかった。」
大好きな曲ばかりが収録されているからこそ、初回限定版を手にできなくて悔しい執着心を抱いていたことにも気づけました。
わたしも誰かをワクワクさせたい
ワクワクする気持ち、人を喜ばせる楽しさ。
この二つを教えてくれたから、この2枚のアルバムは、まだ持っていたいわたしにとっての宝物。
たくさんの初回限定版を手放したあとにようやく気づけました。
そして今、こう思います。
わたしもaikoのように、誰かの心にふっとワクワクを届けられるような存在でありたい。
イラストでも、言葉でも、ちいさなサプライズを添えて。
「めくってよかった」「見つけてよかった」と思ってもらえるようなハッピーな気持ちを、これからも届けていきたいです。
神戸 トラベルイラストレーター えやひろみ