
カリブ海東部に浮かぶ小さな二つの島、セントクリストファー・ネイビス連邦(通称セントキッツ・ネイビス)。2025年大阪万博では、共同館「コモンズ-A」に参加しています。
実はわたし、10年以上前に「一度はカリブ海を見てみたい」と思ってこの国を訪れたことがあります。万博でセントキッツ・ネイビスパビリオンを目にした瞬間、果てしなく広がる真っ青な海と、街に響くスチールドラムの音がよみがえりました。
当時は現地情報がほとんどなく、旅行会社で航空券を頼んだときには「それはどこの国ですか?」と聞かれたほどの「未知の国」。今回の万博をきっかけに、当時のセントキッツの旅を改めて記録してみたいと思います。
セントキッツ・ネイビスってどんな国?

セントキッツ・ネイビスは1983年にイギリスから独立したカリブ海の島国。セントクリストファー島とネイビス島の2つの島からなるミニ国家です。

公用語は英語。面積は淡路島よりも小さく、西表島と同じぐらいの広さで、南北アメリカで一番小さな国です。

街に流れるスチールドラムの音色は、カリブの陽気な雰囲気をより一層引き立てていました。
日本からセントキッツへの行き方

- 日本からのアクセス(2010年1月当時、関西発着の場合)
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往路: 伊丹 → 成田 → ダラス → マイアミ(1泊) → セントキッツ。
復路:セントキッツ → マイアミ(1泊) → シカゴ → 成田 → 伊丹。万博パビリオンの現地スタッフは、セントキッツ→マイアミ→ロサンゼルス→関西国際空港のルートで来たそうです。
セントキッツ島の最寄りの空港は、ロバート L. ブラッドショー国際空港(SKB)。
初代首相の名前からつけられたそうで、当時『SATC』にハマっていた私は「キャリー・ブラッドショーと同じブラッドショー!」と密かにテンションが上がったのを覚えています。

日本からセントキッツへの直行便はありません。
マイアミからセントキッツ行きの飛行機が出ているので、日本から行くには、まずマイアミを目指します。
航空券は往復で約30万円(時期は2010年1月1日〜10日)。
チケット代金も、長時間移動も大変でしたが、未知の国への旅はそれ以上にワクワクしました。
マイアミでのトランジットは忘れられない思い出があります。
ハブ空港で人の出入りも多く、何をするにもかなり待たされたこと。
宿泊したマイアミ空港内のホテルで、部屋のカードキーが、何度作り直してもらっても作動せず、外出が困難だったこと。
結局、通りがかったハウスキーパーに開けてもらうか、夫と交代で外に出るしかなく、旅の初めからちょっとした試練を味わいました。しかも帰りの宿泊も同じ現象が起きて、疲れすぎていたこともあり、大爆笑したのを覚えています。
今では笑い話ですが、海外旅行ならではのハプニングです。
宿泊先はSt. Kitts Marriott Resort & The Royal Beach Casino(セントキッツ・マリオット)

滞在先に選んだのは、St. Kitts Marriott Resort & The Royal Beach Casino(セントキッツ マリオット リゾート アンド ザ ロイヤル ビーチ カジノ)。

海に面した大きなリゾートホテルで、広々とした客室と開放的なプール、目の前にはカリブ海の青い海が広がる最高のロケーションでした。


朝になると南国の鳥の声が鳴き響き、リゾート感覚が増します。
ホテルの庭で予期せぬイグアナと遭遇してびっくり悲鳴を上げたのも懐かしい思い出。

日常では絶対にしない、バルコニーでお昼寝をしてみたり、非日常のバカンスを存分に楽しみました。
カジノも併設されていて、海外ならではの豪華で開放的な雰囲気を感じられたのも印象的でした。
- St. Kitts Marriott Beach Resort, Casino & Spa
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858 Frigate Bay Road, Frigate Bay, Saint Kitts and Nevis
Tel: +1 869-466-1200
空港⇔ホテルのシャトルバスサービスはありません。タクシーで片道約20USD。
https://www.marriott.com/en-us/hotels/skbrb-st-kitts-marriott-beach-resort-casino-and-spa/overview/
セントキッツの街バセテールを観光

観光名所をいくつかご紹介します。時がゆっくりと流れていくのを感じられる街です。
街歩きで感じたセントキッツの素顔

首都バセテールの中心街に出てみると、リゾートとはまた違うセントキッツの素顔に出会えました。
特に印象に残っているのは、ベンチで楽しそうにおしゃべりしていた地元の高校生たち。

男女グループでわちゃわちゃ笑い合う姿は、まるで高校時代の自分を思い出すような光景で、「どこの国も青春の景色は一緒だな」と微笑ましくなりました。

現地の制服を見れたのも嬉しかったです。
また、街を歩いていると幼稚園児や小学生のグループにも出会いました。

ちょこんと並んで歩く小さな子どもたちが本当に可愛らしく、夫婦で「かわいいね」と話したのを覚えています。
当時は、まだ子どもがいませんでしたが、今になってその時に撮った小さな女の子の写真を見返したら、なんと次女の雰囲気にそっくり。
「まだ出会っていなかった次女と、あの時すでに出会うことが決まっていたんだ」
そんな不思議で温かい気持ちになりました。
旅は、その時見た風景や食事、文化だけでなく、こうした後から気づく旅の記録があるんだなと感じました。

南国で出会ったサンタクロース

街を歩いていると、至るところで、サーフィンに乗ったり、サングラスをかけた「夏バージョンのサンタさん」を見かけました。
訪れたのはお正月だったので、まだクリスマスの雰囲気が残っていたのです。
日本の冬に見る雪景色のサンタとはまったく違って、ここでは太陽の下、海に飛び込むような夏バージョンのサンタさん。
南国のクリスマスは、クリぼっちでも平気に感じそうですよ。
世界遺産ブリムストーン・ヒル要塞国立公園

セントキッツでぜひ訪れてほしいのが、ブリムストーン・ヒル要塞国立公園。
世界遺産にも登録されている歴史的な要塞です。わたしたちはバスツアーに参加して訪れました。

丘の上に築かれた石造りの要塞からは、カリブ海を一望する絶景が広がります。
セントキッツは、西インド諸島で最初にヨーロッパ人、特にフランス人とイギリス人によって植民地化された島です。
この地域の覇権をめぐる争いの中で、戦闘の舞台となった場所です。
海に向かって並べられた大砲は、まるで今も島を守っているかのように感じました。


イギリス人の設計によって建てられた要塞。だけど建築に携わったのは、ほとんどがアフリカから連れてこられた奴隷たちだそうです。
リゾートの華やかさとは対照的で、歴史の重みを肌で感じました。



大庭園ロムニー・マナーとカリベルバティック

第3代アメリカ合衆国大統領トーマス・ジェファーソンの祖先がかつてオーナーだった、歴史ある邸宅跡「ロムニー・マナー」。
緑豊かな、自然が広がる庭園です。
あとから知ったのですが、樹齢400年以上、セントキッツ最大の生命体である壮大なサマンの木が園内に存在し、パワーを感じるそうです。
また、敷地内にはカリブ海最高級のバティック(ろうけつ染め)を扱うショッピング施設も併設されていて、バティック体験もできます。(48時間前までに要予約)。

綺麗な色使いでとても勉強になります。一つの作品にたくさんの色は使っていないのに、元気溢れる作品がたくさん見られました。

ランドマークBerkeley Memorial Clock Tower(バークレー記念時計塔)

中心街のランドマークとも言えるバークレー記念時計塔。この辺りには、レストランや、お土産が買えるお店が立ち並びます。
先にご紹介した、夏バージョンのサンタさんもこの辺りで多く見かけました。
海外のビーチはゆっくりするところ

海外旅行にくるといつも感じるのが、「ビーチはゆっくり休むところ」。
ベンチに寝そべって肌をこんがり焼いたり、お昼寝したり、本を読んだり。
波の音を聞きながら、ゆっくり過ぎゆく時の流れを肌で感じるところなんだなと、海外のツーリストを見て毎回思います。
せっかちで予定を詰め込みがちな日本人代表のようなわたしは、夫とシュノーケルして楽しみました。
「ここがカリブの海!」と感動しながら入水した時の感覚を今でも覚えています。
ただ、カリブの海は波が大きく、シュノーケルにはそんなに向いていないかもしれません。
気になるセントキッツでの食事

滞在中は、ホテルや、ダウンタウンのレストランで食事したり、日本から持ち込んだカップ麺を食べて過ごしました。
カリブと言えばCarib Beer。缶ビールではなく、瓶ビールなのが、テンション上がります。
開放的になって、ここぞとばかりにたくさん飲みました。

ホテル内のビーチサイドでもお食事できます。

セイロ蒸しのチキン料理には甘辛いソースが絡んでいて、これがまたビールに合う!
ポテトフライにかかった濃厚なチーズも癖になります。(食べ過ぎて胃もたれ注意)
米食も楽しめました。どれもお酒に合う南米を感じる味付けです。




セントキッツのお土産にはラムケーキを
サトウキビを原料にしたラム酒が名物です。
そのラム酒を使ったラムケーキ「トルトゥーガのカリビアンラムケーキ」は色んなお店で売られていました。
もちろん自分にも友人にもお土産に買って帰りましたよ。

ラム酒がしっかりきいた、しっとりしたパウンドケーキです。コーヒーやカフェオレ、紅茶ともよく合います。


雑貨類は、猫と現地の人をイメージした可愛いキャラクターの小物がたくさん売られていました。
わたしは、キッチン用の食器を拭く可愛い布巾と、鍋敷きを買いました。

なぜ猫のキャラクターがたくさん見られるのか……?!
街にはかわいい猫ちゃんがたくさんいたからなのかな、と思います。
街のシンボル的存在でしょうか。
小さな島国がくれた大きな記憶

日本から遠く離れた国、しかもあまり日本人が行かなさそうなところへ行ってみたい。カリブ海をこの目で見てみたい。
そんな思いで20代の頃に訪れたセントキッツ。
大阪万博のおかげで、10年以上前の旅を振り返りることができて、再びカリブの島国の感覚を思い出すことができました。

今のわたしに「旅を記録する意味」を教えてくれたように思います。
旅は、大きく動いた分だけ、大きな気づきがあります。
日ごろから目にしているのに見過ごしていることが、旅先ではクリアに見えたり、歴史的観光地に行くことで、知らなかった歴史を学べます。
旅は行って終わりでなく、どう感じたか、その感覚は一体何なのか、自分に何を言わんとしているのか、そこまで掘り下げて気づいてこそ、旅の醍醐味だと思います。
わたしは、あの時、日本を抜け出して、遠く離れた、あまり知られていない国で、ゆっくり過ごして、気持ちを開放したかったんだなと思います。
広い世界には、まだ知られていない国や物語がたくさんあります。
味わったことない色んな国のお料理を食べたり、心が晴れやかになる太陽の下で明るい服を着て、知らない街を散策したい。
現地でしか味わえない吹く風や漂う空気を感じながら。
これからもトラベルイラストレーターとして、もっともっと色んなところを訪れて、旅先で見て、感じて、出会ったことを描きながら発信していきたいと思います。
神戸 トラベルイラストレーター えやひろみ