
当然のように「持っておくべきもの」と決めつけていた物たち。
それらと徹底的に向き合い、少しずつ手放しています。
前回の記事で書いた「ウィッグ」に続き、今回手放すと決めたのは、抗がん剤治療中の体調を記録していたダイアリー。
A5サイズでかさばらず、「一生持っておくもの」と思い込んでいました。辛かった日々を忘れないために。

けれど、あの頑張った時間はわたしの中で決して消えることはありません。
そして今は「もう絶対病気にならない。元気になった」と心に誓ったからこそ、このブログに気持ちを残し、ダイアリーを手放すことにしました。
実際のところ、こまめに記録を取るのは得意ではなく、ダイアリーには大したことは書いていませんでした。
それでもページをめくると、治療の合間にも大好きな旅行を楽しんでいたことがよみがえってきます。
今回は、その時の写真と一緒に、当時の気持ちを振り返ってみようと思います。
辛い日々も、家族や旅行の思い出に支えられて。

2019年2月。左乳房全摘手術をして、3月から「ゼローダ(一般名: カペシタピン)」という化学療法剤を半年間服用しました。朝夕の一日2回、二週間飲んで、一週間休薬するサイクルです。

ちょうど次女の卒園と小学校入学が重なる時期。イベント目白押しの中で、手術のご褒美とお祝いを兼ねて春休みにディズニーランドへ。夢の国では、辛さを忘れるくらい心から楽しむことができました。

2019年9月。再再発が見つかり、再び手術。そして12月から「テセントリク」と「アブラキサン」を併用する治療が始まりました。テセントリクは免疫細胞を元気にし、アブラキサンはがん細胞の進行を抑える、点滴の注射薬です。この治療を1年間続けました。
当初は治療がいつ終わるのか分からず、出口の見えない不安に襲われ、ダイアリーもほとんど白紙のまま。でも、その中でも楽しいイベントはやってきます。

可愛いリースをイメージして作ったそうです。
クリスマス。娘たちがケーキを作って、クリスマスカードを添えてくれました。家族4人楽しく迎えるクリスマスの様子を表現した可愛いカード。わたしには、おしゃれな黄色い帽子をかぶせてくれていました。この時、薬の副作用で脱毛して帽子をかぶっていたからです。笑顔で楽しそうなわたしを描いてくれて、心が温かくなりました。

家族4人で行ったユニバーサルスタジオジャパンでは、パークの活気に元気をもらいつつも、夫と娘たちが手をつないで歩く後ろ姿を見て「わたしがいなくても3人で仲良くやっていけるのかも」と、一瞬心が沈んだこともありました。

天気のいい週末にはキャンプへ。人の少ないキャンプ場を選び、脱毛した頭で自然の風を感じるのは、解放感そのものでした。
治療の記録は手放しても、わたしの心には力強く刻まれています。
辛い治療を乗り越えられたのは、大好きな旅行や家族の支え、そして話を聞いてくれる友人のおかげです。
「何事も続けるのは苦手」と思っていたわたしですが、最後まで治療をやり遂げることができました。
わたしって本当に頑張り屋さん。だけど、もう無理な頑張りはやめて、これからは自分を大切に、素直に生きていきたいです。
これまでそばにいてくれた、勲章のような存在のダイアリー。
ありがとう。わたしはもう、大丈夫。
神戸 トラベルイラストレーター えやひろみ