
何度もこのブログで書いていますが、わたしはトリプルネガティブ乳がんのサバイバーです。抗がん剤治療を受けた経験があり、当時のわたしにとって「ウィッグ」は、見た目を守ってくれる存在であり、心の支えでもある相棒でした。
そのウィッグを、このたび手放すことにしました。
ずっと大切に、大切に保管していたウィッグ。再発の不安を抱えながらも、ようやく「ありがとう」と言ってお別れができた気持ちと、ここに至るまでの時間を、今日ここに記しておこうと思います。
(トップの写真は2017年6月。今からちょうど8年前。最初に抗がん剤治療をして脱毛が始まった頃です。前を向ける日もあればそうじゃない時も。この時は、前を向いて頑張るぞって思った記念の一枚です。)
押し入れの奥で見つけた、わたしの「不安」

きっかけは、昨年末の大掃除でした。
押し入れの掃除をしようと、中のものを全部出していたときに、目に入ったウィッグの入った箱。治療の時にお世話になった2つのウィッグ。ちゃんと箱に入れて、押し入れの奥にしまってありました。
掃除を終えてまた押し入れに戻そうとしたその時、ふと「そろそろウィッグとお別れしてもいいかもね」という言葉が、再びふわっと聞こえてきたのです。
「もう手放してもいいかも」その一言がくれた気づき
この言葉は、2年ほど前にかけてもらったものでした。
おっしゃってくださったのは、神戸の開運収納師 整理収納アドバイザー・小西紗代先生。国内外で本も出版されていて、ご活躍されている有名な方で、ご縁があって、神戸市内の我が家までお片付けに来てくださいました。
その時、押し入れにしまっていたウィッグの箱を見て、先生がそっと言ってくれたのがこの言葉。
あの時は、正直とてもびっくりしました。
だって、ウィッグはとっても高価だったし、簡単に「手放す」なんて考えたこともなかったから。
でも驚いた本当の理由は、「またいつか使うかも」と思い込んでいた自分にハッと気づいたからでした。
どこかで無意識に、「また再発するかも」という不安を握りしめていたのです。
決意の先送り、そして小さな行動の積み重ね
それから約2年。
「わたしは完治した。2度と病気にはならない」そう決めていたはずなのに、ウィッグはずっと手元にありました。
年末の大掃除の時、「今回は本気で手放そう」と思いました。
まずは、ウィッグの箱を押し入れから出して、毎日目に入る場所に置くことから始めました。視界に入れることで、心の整理も少しずつ進められるような気がしたのです。
やっと「ありがとう」と言えた日


それから約2ヶ月がたち、春が来たころ、最初の一歩として箱だけを処分しました。
そして、ウィッグを不織布の袋に入れて、PCデスクの上へ。
そこからさらに2ヶ月。
ようやく、「ウィッグを必要とする誰かのために手放そう」と決断ができました。
寄付先に選んだのは、医療用ウィッグを通じてガンと闘う女性を応援しているNPO法人 LinkWig。
感謝の手紙と一緒に、ウィッグを送りました。
次の誰かの「お守り」になりますように

ウィッグに添えた手紙には、こんな想いを込めました。
8年前に乳がんを患い、その後2度も再発してしまいました。
2度目の抗がん剤治療の時は、一年間頑張って治療に励みました。
治療中の相棒とも言えるウィッグ。
2度も再発の経験をしているので、またいつか再発してしまうんじゃないか……
不安がぬぐえず、大事に保管していましたが、わたしは決めました。絶対元気に生きると。
だから、これから頑張って治療をする方への、人生の再スタートのお守りとして、このウィッグを使っていただけたら幸いです。
絶対大丈夫と信じて、頑張ってください。
病気になったことは本当につらかったですが、
おかげで今までできないと思っていたイラストを描く仕事や
ニューヨークでの個展にチャレンジすることができて、
病気前より今の自分が大好きです。
頂いた命を大切に、元気に生きる姿を、これから治療を頑張られる方の励みとして
体現していきたいと思っています。
最後に、LinkWigさま。
このように優しく寄り添ってくださる団体を立ち上げてくださり、ありがとうございます。
「もう大丈夫」と、自分に言えた証
このウィッグを手放すまでにかかった時間は、4年近く。
本当に、ものすごく長い道のりでした。
でも、きっとそれでよかったのだと思います。
時間がかかっても、心の準備が整うまで待ってもいい。
大事なのは、自分のペースで、自分で決めること。
このウィッグが、誰か新しい人の人生の希望になりますように。
そしてもし、今このブログを読んでくださっているあなたが、同じような想いを抱えているなら、伝えたい。
「大丈夫。時間がかかっても、きっと自分のタイミングで手放せる日が来るよ」
神戸 トラベルイラストレーター えやひろみ