
心の奥にしまっていた「いつか」を思い出して、夢をひとつ現実にした日のこと。
ニューヨークで個展をしてから、ちょうど2年が経ちました。
2024年9月。
わたしは憧れだったニューヨークのギャラリーで、作品に想いをのせて展示しました。
今でも時々、現地で味わった空気感を思い出します。
実はわたし、ニューヨークで個展をすると決める前に、モンゴルツアーに参加しようとしていました。
モンゴルツアーとニューヨーク。
何の関係がある??
と思いますよね。
あれから2年。
そして、ちょうど『VIVANT』の続編が放送されている今。
今日は、その個展をすることになった、ちょっと意外なきっかけの裏話を書こうと思います。
20代最後に訪れた、初めてのニューヨーク
初めてニューヨークへ行ったのは、20代最後の頃。
街を歩いていると、いろんな国の人がいて、いろんなカラフルなもの、ユーモアあふれるものがたくさんあって、表現方法に決まりがないことに驚き、ワクワク感を掻き立てられました。
「こんなに自由に表現していいんだ。」
その時、
「いつかわたしも、アーティストになって、ここで何かできたらいいな。」
何ができるか当時のわたしには、想像もつかなくて漠然としていたけれど、
いつか、ここで。
それだけは、はっきりしていました。
年月が経ち、わたしは乳がんになりました。
治療や再発を繰り返しながら、生きることに精一杯だった時期を過ぎて、
「もし、いつかやりたいと思っていることがあるなら、本気でちゃんとやってみたい。」
と思うようになりました。
そのとき、昔の記憶の中から、ふっと出てきたのが、あの「いつかニューヨークで」という夢でした。
でも、それはまだ夢のまま。
わたしはその夢を、心の中の大切な箱に、そっとしまっていました。
夢は、宝物みたいなもの
夢って、宝物みたいなものなのかもしれません。
大切だから、なくさないようにしまっておく。
誰に見せるでもなく、自分だけが知っている。
「いつか叶ったらいいな。」
そう思いながらも、心の奥にひっそり置いている。
わたしは、ニューヨークの夢を、心の宝箱の中に大事に保管していました。
でも、今思えば、宝物って、ずっと箱にしまっておくものではないのかもしれません。
時々ちゃんと箱を開けて、
「やっぱりこれ、好きだな。」
と眺めてみる。
そして、
「これ、いつかじゃなくて、今できないかな?」
と、もう一度手に取ってみる。
だって、大事な宝物を見ないで蓋をしておくなんて、宝物もちょっと寂しくて、拗ねちゃいそうですよね。
モンゴルが現れた日
コロナ禍で海外旅行もなかなか難しかったあの頃。
そして、少しずつ世の中が動き始めたころに、わたしはあるものを見つけました。
大人気ドラマ『VIVANT』のロケ地、モンゴルを巡り、現地俳優さんと一緒に食事ができるツアーの広告です。
こういうの、大好き。
もともとモンゴルにはとても興味がありました。
モンゴルに行ったことのある友達の写真を見て、
「いつか行ってみたいな。」
と思っていたのです。
そこへ、大好きなドラマのロケ地巡り。
これはもう、絶対行きたい!
となります。
それなりの金額はするけれど、内容も充実していて、ガイド付き。
「これはチャンス。今行くしかない!」
そう思って、申し込みボタンを押そうとしました。
「ちょっと待って」
その瞬間、ふと思ったんです。
「……待てよ。この金額を出せるなら、もしかして……。ニューヨークで個展、できるんじゃない?」
突然、心の奥の箱が開きました。
そこに入っていたのは、昔のわたしが大切にしまっていた、
「いつかニューヨークで」
という夢。
モンゴルに行こうとしたことで、なぜかニューヨークの夢が、急に現実のものとして見えてきたのです。
そして、ちょうどその頃、
「やりたいことは、口にしてみよう。」
というような話をしていたところでした。
そこでわたしは、みんなの前で、
「ニューヨークで個展をしてみたい。」
と口にしました。
「いつか」と心の中で思っていただけの夢を、初めて言葉にした瞬間でした。
そしてわたしは、モンゴルではなく、ニューヨークで個展をすることを選びました。
あの時のわたしは、ひとつを選んだ
今のわたしが振り返ると、
「いや、モンゴルにも行って、ニューヨークで個展もすればよかったやん。」
と思います。
どっちも選べたかもしれない。
でも、あのときのわたしは、まだ知りませんでした。
夢は、何個選んだっていい。
ということを。
どちらかを選ぶことが精一杯で、夢は一つに絞らないといけないと思っていました。
「モンゴルに行く」か、「ニューヨークで個展をする」か。
両方を選ぶことはできなかったけれど、わたしは、自分の中にしまっていた「いつか」の夢を、ちゃんと選ぶことができた。
そして、一歩進んだ。
2024年9月。
わたしは本当に、ニューヨークで個展をしました。
行動したからこそ気づけたこと
あれから2年。
46歳になった今のわたしは、少しだけ違う景色を見ています。
夢は、ひとつじゃなくていい。
モンゴルにも行っていい。
ニューヨークで個展をしてもいい。
ファーストクラスで世界一周したっていい。
1周と言わず、2周でも3周でも。
行きたい場所がいくつあってもいい。
やってみたいことが、いくつあってもいい。
「どちらか一つしか選べない」と思いこんでいたけれど、行動したからこそ、あとから振り返って気づけたこと。
そして、夢って、意気込んで、無理に見つけるものでもないのかもしれません。
ふと広告を見つけたり。
誰かの写真を見たり。
ドラマにハマったり。
「これ、やってみたいな。」
と思ったり。
日常の小さな「いいな」が、心の奥にしまっていた、すでに自分の中にある夢を思い出させてくれることもあると思います。
「いつか」の箱を、時々開けてみる
わたしはこれからも、夢を大切にしていきたい。
でも、大事だからといって、箱にしまったままにするのではなく、
ときどき開けてみる。
眺めてみる。
「今のわたしなら、どうかな?」
と聞いてみる。
叶え方が変わっているかもしれない。
今ならできるかもしれない。
もしかしたら、ひとつではなく、全部できるかもしれない。
自分の「いつか」を、もう少し気軽に取り出してみたいと思っています。

わたしの作品、マダムシリーズの一人「マダムIKURA」。
やりたいことがイクラでも溢れ出す様子を、マダムIKURAが体現してくれています。
「どっちも欲しいなら、どっちも選べばいい。」
と、彼女が言ってくれているような気がします。

心の中にしまっている夢がある人へ。
その箱、たまには開けてあげてくださいね。
もしかしたらそこには、今のあなたが、もう一度出会うのを待っている、小さな「いつか」が入っているかもしれないから。
なんか大丈夫かも。
そう思えたところから、人生が少し動き出しているのかもしれませんよ。
神戸 トラベルイラストレーター えやひろみ
