
「この絵、こっち向きなんやー。なんか良いと思う。」
次女のそのひと言で、
「うん、こっちでいこう」と決めました。
最初は上向きにしていたこの人魚。

でも描いているうちに、鱗のきらめきがきれいで、逆さにした方が見てほしいところがよく見える気がしてきたのです。

そう思いながらも、「後ろ向きの悲しい絵と思われたらどうしよう」と、いつものネガティブなわたしの思考が頭を巡ります。
でも、よく考えたら、上とか下とかって、決める必要あるのだろうか。
上が上とは限らない。
そもそも、後ろ向きの悲しい絵だったっていいはずだ。
見る人の感じるままに見てもらえたら。
だから、この子はこの向きにしました。
背中を押してくれたのは、次女の「なんか良い」という言葉。
いつもは理由をきちんと説明してくれる子なのに、このときは「なんか」。
この言葉を聞いて、この絵をじっくり感じてもらえそうな気がしました。
この人魚の3人のモデル
この人魚には、3人のモデルがいます。
ひとりは、毎年訪れる海でお世話になっているマリンアクティビティーのツアーガイドの方。
シュノーケルツアーで見るその泳ぎは、まるで本当に人魚のよう。
軽やかで、美しくて、海や自然に対する敬意を感じる姿がとても素敵で、いつも信頼して身を任せています。
こんなふうに泳げたらいいな、と海に入るたびに思います。
よく泣く長女
二人目のモデルは、長女です。
小学校の頃から、学校で大泣きして先生から電話がかかってくることが毎年のようにありました。
理由がはっきりしないこともあって、先生も心配してくださる。
私はそのたびに「すみません」と謝っていました。
でもあるとき、ふと思ったのです。
「泣いたらあかんのかーー?」
別にいいやん。
泣くことは、悪いことじゃない。
むしろ、感情をそのまま外に出せるってすごいことかもしれない。
私はどちらかというと何でも我慢してしまうタイプ。
だから、涙で気持ちを浄化できるって特技みたいなものかもしれないなと思いました。
ただ、なんで泣いているのか、学校の先生も家族もわからないと、どうしていいのか戸惑ってしまうのも、本当のところ。
もしできたら、時間がかかってもいいから
悲しい
痛い
困っている
そんな気持ちを、ひと言だけでも伝えられたらいいなと思います。
涙は悪じゃない。
真珠のような涙
そのとき、ある人のことを思い出しました。
涙がとても美しい人。
真珠みたいな涙を流す姿が本当にきれいで。
喜びも悲しみも、そのまま表現できる人。
愛の涙を流す人。
だからきっと、愛されるんだろうなと思います。
わたしも、こんなふうに生きられたらいいな。
そんな想いを重ねながらこの人魚を描きました。
喜びも悲しみも、どちらも人の大切な感情。
涙は、心をきれいにしてくれるものかもしれません。
もしこの絵を見たとき、何か心に浮かぶものがあったら、それはきっとあなたの物語です。
神戸 トラベルイラストレーター えやひろみ
