
子育て中のママがもし「がん」と宣告されたら……。
きっと、自分の身体のことよりも、子どものことが一番に浮かぶのではないでしょうか。
わたしは2017年にトリプルネガティブ乳がんと宣告され、その後、二度の再発を経験しました。当時の娘たちは園児。自分の身体はもちろんのこと、子育てが一番心配で不安でした。
同じように子育て中のがんサバイバーママさんや、これから治療に立ち向かうママさんへ。
少しでも共感や励ましが届けばと願っています。
病院でもらった冊子『がん治療 子育て わたし+人生 ~がん治療と向き合ったママたちと家族の記録~』を参考に、ここにわたし自身の体験や、子育てとの両立の葛藤を綴ります。
【体験談】がん治療を経験したママの気持ち、パパの気持ちQ&A

この冊子では、質問形式で、がんを経験したさまざまなママさんやパパさんの気持ちが紹介されています。
冊子の回答を読んで、わたしは、ママの気持ちに対して共感しかありませんでした。きっとどのママさんも同じ気持ちだと思います。
冊子より一部抜粋しながら、わたしも答えたいと思います。夫にも当時の気持ちをインタビューしました。夫へ当時の気持ちを聞くのは9年たって初めてのことです。
Q1. 診断されたときに心配だったことは何でしたか?

冊子の回答
【ママの声】
- 病気がどの程度進行ているか。
- いつまで生きられるか。
- がん=死のイメージ
- 急な通院時に一時預かり保育をしてくれる場所はあるのか?
- 抗がん剤治療に子どもを連れて通院できるのか
などなど【パパの声】
- ベストの治療法は何か?
- 妻の今後、子どものこと。
- 妻の病状・精神状態、子供の精神状態
(冊子からの一部抜粋)
わたしたち夫婦の回答

わたしが一番に浮かんだことは、冒頭でも書きましたが、やはり子供たちのことです。当時はまだ園児だった二人の娘たち。気がかりでなりませんでした。ちゃんと子育てができるのか、お家のことをうまく回せるのか……。不安と心配ばかり。そしてしばらくの間、自分の葬儀の妄想とか、マイナスな「最悪」のことばかり考えていました。妄想が進み、娘が思春期を迎える時、わたしはもうこの世にはいない。娘に初潮がきたら、夫は対応できるかな。娘が反抗期になって、夫に口もきかなかったら、家族がバラバラになるのでは……。どこまでもネガティブなことばかりが湧き出てきました。

対して夫は、子どものことよりまずはわたしの身体のことを心配していたようです。だけど、絶対完治すると信じてくれていたようです。
Q2. 治療中に大変だったことは何でしたか?

冊子の回答
【ママの声】
- 授業参観や運動会など、子どもの行事に参加できなかったこと。
- 精神的に不安になったが夫に伝えられない悪循環な日々で、自分の体調管理、栄養管理、精神的ケアは後回しとなり優先順位が分からなくなった。
- 抗がん剤の週は起き上がれず、家族の健康管理ができなかった。
- 髪の毛が抜け始めた時の精神的な辛さ。
などなど【パパの声】
- 妻の精神的なケアとお金の心配。
- 子どもの世話と仕事の両立。上手にバランスがとれるようになるまで時間がかかった。
(冊子からの一部抜粋)
わたしたち夫婦の回答

・園の行事参加
・子供たちのケンカ(泣かれるとどうしていいか分からなかった。別の意味でこっちも泣きたかった。)
・お友達と一緒にわが家で遊びたいと子どもたちに言われたこと。(しんどかったので身内以外を家に入れたくなかった。)
・トイレ掃除(抗がん剤治療中、尿に抗がん剤が混じっていると言われたので、子どもたちに影響ないよう、毎日ちゃんとトイレ掃除をしておかないといけないと思ってしまった。)
書き出すとキリがありませんが……。色々と、気持ちがしんどかったです。何が食べたいのか、気分転換にどこかへ行きたくても、どこへ行ったらいいのか、判断力が鈍っていました。それだけ生きることに精一杯だったのだと思います。

夫は本当にいつも通りに接してくれていました。いつも通り過ぎて、「わたしが病気で辛くないの?」と思うこともありましたが、きっと、家族みんなで暗くなっては、悪循環になってしまう、と、夫なりの配慮だったようです。
Q3. 治療中、夫にしてほしいと思ったことは何ですか?
冊子の回答
【ママの声】
- 子どもの相手
- 自分(妻)のサポート
- 食事の準備
- 掃除・選択などの家事全般
などなど【パパの声(妻の治療中、自分がサポートしていたこと)】
- 掃除・選択などの家事全般
- 妻の精神的サポート
- 食事の準備
などなど(一部抜粋)(冊子からの一部抜粋)
わたしたち夫婦の回答

・子どもたちの相手
動きたい盛りの園児の相手をするのは、治療中のわたしにはとてもしんどいことだったので、子どもの相手をしてくれたことはとてもありがたかったです。子ども好きなので、言わなくても当然のように相手をしてくれていました。

仕事しながら家事をどう回すか、色々考えてくれていました。例えば、洗濯は夜に干す(当時はまだ乾燥機付きの洗濯機ではありませんでした)、食材の買い物は週末にまとめて買って、一週間の献立を考える、など。元々まめな夫は家事は気分転換になるそうです。(わたしと真逆)
Q4. 子どもには病気のことをどのように伝えましたか?
冊子の回答
【ママの声】
- 2歳児だったため伝えていない。
- 入院する理由として、がんと言う言葉を隠さずに、正確に話をした。
- 「(3歳の娘に)お母さんのおなかに悪いものができたから、お腹を切って出したんだよ。だからもう大丈夫。元気になったよ」と伝えた。
- 「おかあさんだいじょうぶ?」という絵本を見つけて、内容が自分たちに似ていたので本を読みながら話ができた。
などなど【パパの声(妻の治療中、自分がサポートしていたこと)】
- 最悪と現実的な両方の可能性をできるだけ正確に伝えた。
- ワークショップで「伝え方」を夫婦で勉強してから妻が伝えた。
などなど(冊子からの一部抜粋)
わたしたち夫婦の回答


娘たちに病気のことを話しても、泣いたり悲しんだりする様子は見せませんでした。髪の毛が全部抜けてしまったわたしの姿を見て、「ママ可愛い。ママ可愛い。」と言い続けてくれていました。わたしの似顔絵を描く時も、帽子をかぶせたり、リボンをつけた長い髪の毛を描いてくれていました。将来元気になったわたし姿を願って描いてくれたのかもしれません。

不安をあおるようなことを言うのはよくないと思っていたようです。
Q5. 子どもに病気のことを伝えてよかったこと、悪かったことは?
冊子の回答
【ママの声】
- 説明していたので髪の毛がなくなっても、不安には感じていなかったようです。
- 「お母さんのお手伝いをする」と、よく手伝いをしてくれます。
- 「○○ちゃんがお医者さんになって病気を治してあげる」と前向きで、優しい気持ちを持ってくれていること。
などなど【パパの声(妻の治療中、自分がサポートしていたこと)】
- そのまま伝えたため、大きく関係が変わることがなかった。
- 病気の理解はできなくても、妻の口から直接伝えたことで、愛情は伝わってたんじゃないかと思う。
などなど(冊子からの一部抜粋)
わたしたち夫婦の回答

幼い頃から、「自分のことは自分で」という取り組みは、のちの自立心に繋がって今でも助かっています。
次女は、「お医者さんになってママの病気を治す」、とか「髪の毛が抜けない薬を開発する」と、前向きに世界を広げてくれたのはとても嬉しかったです。

夫婦ともに、二人の娘にはとても助けられました。
Q6. 勤務先に病気のことを伝えてよかったことは何ですか? (仕事をしていた場合)
冊子の回答
【ママの声】
- 治療中休むことができた。
- 人間関係は良く治療しながら仕事できる方法を考えてくれた。
- 病気に配慮して、休職扱いにしてくれた
【パパの声】
- 妻の治療で会社の休みがとりやすかった。
- 上司に話したことで、仕事上、様々な配慮をしていただけた。
(冊子からの一部抜粋)
わたしたち夫婦の回答

ピンクリボンを見た時は、嬉しくて涙が出そうでした。口には出さないけど、心配してくれていたのだなと思いました。

乗り気のしない飲み会を断る良い口実ができたようです。(笑)
Q7. 治療中、夫の勤務時間に変化はありましたか?
冊子の回答
【ママの声】
- 出張を入れないでくれた。
- 術後一か月間飲み会なし。
- 一年間、残業がなくなった。
などなど【パパの声】
- 出張を減らし、妻の入院時はまとまった有給休暇を取った。
- 残業や泊り出張を減少、その分、仕事を持ち帰ってやる機会も増えました。
(冊子からの一部抜粋)
わたしたち夫婦の回答

とはいえ、そうでない時もありました。仕事なので仕方ないと思っていました。そういう時は、子どもたちもおとなしくしてくれて、何とかなりました。

・国内出張は日帰りにした。
・コロナ期間中は世の中的にも働き方が一変したので、2020年の治療中はある意味、影響がなかったかもしれないね。
働き盛りの年齢なのに、仕事をセーブさせてしまって、申し訳ない気持ちでいっぱいでした。わたしがこんなことにならなければ、もっと色々やりたいこともあっただろうな、とあの時のわたしは自分を責めてばかりでした。
2020年のコロナ禍の治療は、在宅勤務の日も多かったので、わたしとしては助かる部分もありました。
Q8. 病気になってから、パートナーに言いたいけれど言えないことがあれば教えてください。
冊子の回答
【ママの声】
- もう少し、心身のケアに配慮してほしい。
- 体調不良の時、早く帰ってきてほしいと言えなかったけど、仕事で仕方ないと思うと言えなかった。
- 抗がん剤治療中に、お惣菜や弁当を買ってきてもらっていたが、帰りが遅い夫は、割引シールがついていたからと、揚げ物だらけの弁当をよく買ってきて、野菜中心がいいとうまく伝えることができなかった。
などなど【パパの声】
- 泣かないでほしい。
- お互い結構言いあっているので、ありません。
(冊子からの一部抜粋)
わたしたち夫婦の回答

何でも手伝ってくれる夫ですが、言われたことだけをちゃんとするところがあります。逆を言えば、言われなかったことはしないので、一から十まで伝えるのがしんどい時がありました。伝えるって難しいですね。シンプルに伝えること。今でもわたしの課題です。

一年に及ぶ長期治療の時は、コロナ禍でもあったので、強制終了させられたところもありますが、海外へは行きたかったようです。わたしも行きたかったです。
Q9. 病気になってから、パートナーに対して我慢していることがあれば教えてください。
冊子の回答
【ママの声】
- 治療に心身の変化についていけない、どうか不安な気持ちを聞いてほしい。
- 治療中、疲れやすかったりするのをわかってほしかった。
- 具合が悪くてもなかなか言えない、きついと言って休めない。
などなど【パパの声】
- 職場での飲み会は一次会のみで帰宅する。
- ネット上に溢れてる情報や真実か判断できない情報を鵜吞みにしないでほしい。
(冊子からの一部抜粋)
わたしたち夫婦の回答

病気になって、食生活を見直したいと思い、食材をこだわるようになりました。夫からすると過剰反応をしているように見えるようです。わたしは口にするものはなるべく素材の良いもの取りたいと考えています。夫は質より安いものを選びたがります。高いものが必ずしも良いというわけではないのですが、もう少し考えてほしいです。

山ほどあると言われたらどうしようかと思いました。よかったよかった。
Q10. 治療中、パートナーからかけてほしかった言葉、かけてもらって嬉しかった言葉は何でしたか?

冊子の回答
【ママの声】
- 一人でいるのが不安だったから、ただ側にいてほしかった。
- 何があっても一つ一つ進んでいくしかないのだから、大丈夫と言う言葉。
- 頑張ったね、一緒に頑張ろう。
- がんになったのは誰のせいでもない。
などなど【パパの声】
- ありがとう。
- いつもも助かっている。
- 僕より長生きするそうです。安心しました。
- 僕への気遣いより、前を向いた言葉の方が嬉しく感じます。
(冊子からの一部抜粋)
わたしたち夫婦の回答

しんどくて、ご飯を食べれなかったとき、お味噌汁を3口ほど飲んだだけなのに、とても褒めてくれました。その時は、大袈裟だなぁと思いましたが、それだけ心配してくれていたのかな、と思います。

その心意気があるなら絶対大丈夫だと確信したようです。
この時の会話はわたしも鮮明に覚えています。再再発してどん底まで落ちて、夫婦で色々話していた時のことです。たくさん話をして、治療を頑張る腹をくくりました。還暦までと言わず、何歳までもイキイキと生きたいです。
これから治療を頑張るママへ

一度どん底まで落ち込んだからこそ、底力で這い上がることができました。やりたいこともたくさん湧き出てきました。そして、今のわたしがあります。もちろん、家族や友人、周りの人たちの支えがあってこそ。こんなに想ってくれる人がいるのだと知ることができて、最悪の状況の中にも「幸せ」を感じました。

わたしはこんなにも悲しくてつらいのに、家族は楽観的だな、しょせん他人事なのかな、と思ったこともありました。
でも、悲観的にならず「信じる気持ち」で家族が側にいてくれたからこそ、わたしも辛い日々を乗り越えることができたのだと思います。
不安に思うと、不安を呼んでしまうものです。
不安にとらわれすぎず、ほんの少しでも希望を持つこと。
それが、きっと明日につながります。
簡単に「前向きに!」なんて言えない日もあるかもしれません。
でもどうか忘れないでください。
わたしも、そして多くの仲間も、心からあなたを応援しています。
神戸 トラベルイラストレーター えやひろみ