今年中にどうしても書きたかった、少し前のお話です。2023年10月のこと。フリーアナウンサー清水健氏による講演会に行ってきました。それは【令和5年度 なだふくしフェスタオープニング講演会~なだくがつながる なだくをつなげる~】というイベントの無料講演会。清水氏に、いつかお会いしてみたいと思っていたので、区の広報誌でこのイベントを知った時は、嬉しくてすぐに申し込みをしました。講演を聴く中で、清水氏とは、カタチは違えど「想い」は同じだなと感じたので、この気持ちをここに残そうと思います。
フリーアナウンサー清水健氏とは
関西にお住まいの方でしたら馴染みある人も多いと思います。
シミケンの愛称でも親しまれている清水健氏は、元読売テレビアナウンサーで、夕方の報道番組、『かんさい情報ネットten.』のメインキャスターを務めておられました。全国放送で言えば『どっちの料理ショー』に三宅裕司さんのアシスタントで出演されていた方です。
ご結婚後、ご長男が誕生するのですが、実は妊娠中に奥様の乳がん(トリプルネガティブ乳がん)が発覚し……。
奥様ご自身がこんな大変な状況でも、元気な赤ちゃんを産んで、パパとママと赤ちゃんの三人で生きる! と決断されて、妊娠中でも可能な範囲内で手術、そして治療に励まれたそうです。
だけど出産後わずか112日でこの世を去られました。
清水氏による著書『112日間のママ(小学館)』も刊行されています。
奥様がご逝去された一年後に、読売テレビを退社、そして、一般社団法人清水健基金を設立。
入院施設の充実、がん撲滅、難病対策に取り組む団体や、個人の事業への支援活動を行っておられます。
全国各地で講演もされているようです。
わたしのようなものが、ひと様の経歴を簡単にここで書かせてもらっていいものか、少し躊躇いました。
経験したくないことばかりを経験してしまった清水氏のことを、たった数行にまとめるのは大変失礼かと思いますが、ご活動の様子を知っていただければと思い、書かせていただいております。
印象に残ったフレーズ。経験してしまった。
奥様の旅立ち。
清水氏は、絶対に経験したくなかったことを経験してしまいました。
「経験してしまいました。あえてしてしまいましたという表現をしています。だって経験したくなかったから。」
講演で印象に残ったフレーズの一つです。
「経験した」と「経験してしまった」は全然違います。
わたし自身、乳がんを経験してしまい、したくない辛い想いをたくさんしてしまいました。
「なんでわたしやねん……。」と思ったこと、何度もあります。
でも、こんな思いするのは、家族の誰でもなく、わたしでよかった、とも何度も思いました。
矛盾していますが……。
ただ、こんなこと全く望んでいなかった、こんな経験絶対にしたくなかった。
だから「経験してしまった。」
こう表現したくなる気持ちが痛いほどわかりました。
質疑応答でわたしの想いを宣言。絶対に生きる!
わたしの病気のタイプも、清水氏の奥様と同じく、トリプルネガティブ乳がん。
一般的に、予後が悪いと言われています。
そう言われていても、ちゃんと治療をして適切な処置をすれば絶対大丈夫だと、わたしは信じています。
(大丈夫じゃなかった人が、適切な治療をしていなかった、と言いたいのではなく、自分自身に絶対大丈夫と言い聞かせているのです。そしてもし、これから治療を頑張る方がこの記事を読んでくださっていたら、絶対大丈夫だよってエールを送りたいです。読む人によっては誤解を与えてしまうような表現になっているかもしれませんので、カッコ書きしています。)
それを証明したくて、わたしは、いま、文章で、そして得意のイラストを添えて、世に発信していきたいと強く思っています。
そしてわたしは、絶対に生きると決めました。
講演会最後の質疑応答の場で、わたしは挙手をして、想いを発言させていただきました。
自分も同じトリプルネガティブ乳がんを経験してしまったこと、再発を2回経験してしまったこと、だけど絶対大丈夫と信じて生きると決めたこと。
清水氏や会場にいる皆さんの前で、そう宣言しました。
こう思えるようになったのも、周りの人たちが支えてくれているおかげです。
そして諦めずに前を向いていくと決めた自分自身のチカラだとも思っています。
講演会で感じたこと
わたしは、辛い病気を乗り越えるためにしんどい治療を頑張り、そしてそれを支えてくれる家族や友人がいる。どちらかと言うと応援される側の人間でした。
病気がわかった時、最初は当然ショックで、悲しくて、辛くて、不安で死ぬほど苦しかったです。
頑張って治療して乗り越えるしか方法はない、頑張る! と腹をくくってからは、気持ちを切り替え、前だけを見て過ごしました。
安心してそのようにできたのは、家族や友人、大切な人たちが応援してくれたからだと思います。
だけど、応援する側の気持ちはどうだったのでしょう。不安に思ったに違いありません。信じて応援する方が、きっとたくさんのエネルギーを使って、大変だったはず。辛かったはず。不安そうな顔を一切見せずにわたしを応援してくれていた夫や両親はどう思っていたのでしょう……。
いまだに聞けません。
今わたしが、笑って機嫌よさそうに楽しく過ごしている様子を見て、きっと夫も両親も嬉しいと思ってくれているのかな、と勝手に思っています。
ちなみに、娘たちには、当時の気持ちをインタビューできました。その時の様子を別記事で綴っていますので、良かったら併せてご覧ください。
ひとりじゃないよ、みんな一緒だよ
講演の最後に清水氏がおっしゃっていました。
「ひとりじゃない、みんな一緒だよ。」
わたしもそう思います。
わたしたちの周りには必ず誰かがいます。
一人で苦しむ必要はありません。
だけど、自分の気持ちや想いを発するのにそれなりのパワーを使いますし、言えなくなる時もあります。
どうしても前を向けない時もあります。
殻に閉じこもりたくなる時もあります。
そんな時は、少し止まってもいいと思います。
清水氏はおっしゃっていました。
少し止まると書いて「歩く」だと。
たとえ立ち止まったとしても、すこ~しずつ歩んでいるのです。
「歩む」
緩やかなのに力強い、とても勇気の出る言葉だと思いました。
一緒に写真を撮ってもらいました。
講演会終了後に、清水氏の著書『112日間のママ(小学館)』を購入。そして直筆のサインをいただきました。
なんと記念撮影も一緒に。その時に講演会の感想をお話させていただきました。
本当は、奥様へ直接、何万回も何百万回も伝えたい愛なんだろうな。
「人って強くなんてないです。でも弱くもないです。」
「人って強くなんてないです。でも弱くもないです。」これは講演会で一番印象に残った言葉。
これまで何度、涙を流しながら「強くなりたい」と思ったことか。
だけど強くなりたいと思う小さな力があったからこそ、いま、こうやって元気に過ごしています。弱くない!
この命を大切に、自分の使命を果たして生きていきたいと思います。
何があっても絶対大丈夫だよ。みんなそばにいるよ。いつも一緒だよ。
神戸 トラベルイラストレーター えやひろみ