
TBS系ドラマ「じゃあ、あんたが作ってみろよ」。
毎回、心に刺さるセリフがあり、わたしにとって“心の整理”を手伝ってくれる作品です。第9話の放送で聞いた一言が、8年前の自分と重なりました。食べること、感じること、そして“美味しい”と心がつぶやく感覚。その小さな安心が、どれほどわたしに生きるチカラを与えてくれたことか。振り返りながらここに綴ります。
ドラマのひと言が胸に残った理由
劇中で、思いっきり落ち込む出来事があった登場人物が、お酒を飲みながら美味しいものを食べるシーンがありました。
その時のセリフ。
「美味しいものを食べて嫌なことが消えるわけじゃないけど、こうやって美味しいと思えたら、まだ大丈夫って思えるんだよね。」
この言葉が胸にストンと落ちていきました。
「あぁ、わたしもそう思ったことがある。」と。
8年前のわたしを支えた“美味しい”という感覚

乳がんの抗がん剤治療を始めたばかりの頃。
副作用への恐怖、病気が進んでしまうかもしれない不安。心は揺れ続けていたけれど、それでも——
ご飯はしっかり喉を通り、そして「美味しい」と思えた。
この事実が、どれほど大きな救いだったか。
美味しいものは、どんな時も美味しい。
そう思える自分は「きっと大丈夫」。
ここで終わらない。
そう信じられました。

思い返すと、あの時食べたものはどれも忘れられません。
家族が作ってくれた温かいご飯。
友人が届けてくれた、愛が包まれた春巻き。
気分転換に奮発して行ったレストランの料理。
治療の帰り道に買ったパンとコンビニスイーツ。たまに食べたくなるカップ麺。
全部が、ちゃんと美味しかった。
あれから8年。今も“気づきの途中”で生きている
ドラマを観ながら、生きることに精一杯だったあの時の記憶がふっと蘇りました。
気づけばあれから8年。
今もこうして元気に過ごせていることが、何より幸せ。
うれしいことも、ツラいことも、いろいろあっても、どんな日でも、ご飯が美味しいと心で感じれたら、まだ踏ん張っていける。絶対大丈夫。
そう自分に言い聞かせながら、わたしは今日も“気づきの途中”にいます。
神戸 トラベルイラストレーター えやひろみ
